豪華絢爛/千紫万紅-乱世の花の色-
　しかし、宴もたけなわとならば、高揚しきった空気に、慶次郎のふざけた態度は適当だ。

　パンッ、パンッと、響く拍子に合わせ、頬かむりと猿の面を付けた慶次郎は、扇を手に面白おかしく舞う。
何かおかしな動きをする度に、周囲からはどっと笑いが起こった。

　これで調子に乗ったらしい慶次郎は、正しく猿真似をし、連座している一人の大名の膝の上に腰をおろした。

「お、おいっ」

「よいではありませぬか。その方が猿らしい」

　隣の大名がそう言うと、次はそちらへ移動し、ちらりと顔色を伺う。
この様子が何とも猿らしく、その大名は吹き出してしまった。
その間に、また次の大名の膝に移る。

　繰り返す度に笑いが起こるのが面白いらしく、慶次郎は一向に猿真似を止めない。
咎める者もない。寧ろ、「もっとやれ」と囃す声がする。

　調子に乗った慶次郎は、何人ものの膝に座ってふざけていた。今まで通った場所にいた者には、一通り腰かけている。

　だが、ある大名の前でぴたりと止まると、その者の膝には座らず、次へ行った。

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表紙・目次

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