豪華絢爛/千紫万紅-乱世の花の色-
 それ以外の大名方は、不思議で仕方ないだろう。

「さぁ?」

「上杉殿を怒らせるのは、流石の慶次郎殿でも気が引けたのでしょう」

 ケタリと笑った方の言葉で、周囲の方々は、慶次郎が避けた人物に視線を注ぐ。

 慶次郎の様子が余り気にならないのか、酒の入った猪口を口に運ばない間のみ、そちらをちらりと見るだけだ。

 慶次郎が避けたのは、かの上杉謙信公の跡を継いだ会津の上杉景勝だった。

 少しばかりの酒を煽っている景勝は、宴の高揚した空気に飲まれる事なく、静かにそこに座っていた。それだけだった。
けれど、整然として凛としたその姿は、何も寄せ付けない威厳や迫力の様なものに満ちている。

「そうやもしれませぬな」

 諸大名方をもして、そう思わせる程に。

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