豪華絢爛/千紫万紅-乱世の花の色-
忠臣二代
「はぁ」

 普段の覇気が全く感じられない、重い溜め息を吐く息子に、於夕は声を掛けた。

「どうしたのです?」

 母の声を聞いた左衛門は、光の消えた暗い目を母に向ける。

「どうしたのです、貴方らしくありませんよ」

 その母の言葉に、左衛門は「ははっ」と乾いた笑みを浮かべる。

「そうで御座います。おれは、自分らしくもなく、悩んでいるのです」

 わざとらしく驚いた母は、袖で口を隠す。その裏を見ずとも分かる、笑みを浮かべながら。

「私でよければ、話を聞きますよ」

 それを聞いた左衛門の目に光が少々戻った。

「実を言いますと、母上にその悩みを聞いて頂きたく、この様な所に立っておりました」

 照れ笑いの様な自嘲を左衛門が浮かべると、母は自分より高い位置にある頭を撫でた。

「子供扱いは止めて下され」

 その手を左衛門が払えないのを知っている母は、自分から手を退け、再びそれを口許に寄せる。

「ふふっ。私たちにとっては、何時までも〈可愛い〉子供ですよ」

 愉快そうに笑う母には、敵わないと、左衛門も観念した様に笑う。

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