豪華絢爛/千紫万紅-乱世の花の色-
それはまだ、左衛門が生まれる前の話。
「今帰ったぞ」
「お前様、お帰りなさいまし」
於夕は、夫…つまり、左衛門の父を迎える際、いつもより弾んだ声を出した。
「何か、よい事でもあったのか?」
仕事柄か、人柄か。よく気付く夫は、於夕のその様子を直ぐに指摘した。
その瞬間、於夕は照れ笑いの様に、はにかんだ笑みを浮かべる。
「ややこ(赤ん坊)が、出来たので御座います」
「そうか…」
喜んでくれれば良いものを、夫は、残念そうな顔をした。
於夕はそんな態度が不思議な上、少々腹がたった。
「嬉しくないので、御座いますか?」
「そんなはずないであろう。ただ、な…」
ただならぬ声を発した夫を、於夕はただただ見詰めていた。
その続きは、余りに夫らしい言葉だったが、於夕にとっては余り哀しい言葉だった。
「お屋形さまには、まだお子が…跡取りがおられぬ。だのに、儂に先に跡取りが出来る様な事があってはならぬ。
そのややこが、男であったなら…殺す。良いな」
「はい」
「今帰ったぞ」
「お前様、お帰りなさいまし」
於夕は、夫…つまり、左衛門の父を迎える際、いつもより弾んだ声を出した。
「何か、よい事でもあったのか?」
仕事柄か、人柄か。よく気付く夫は、於夕のその様子を直ぐに指摘した。
その瞬間、於夕は照れ笑いの様に、はにかんだ笑みを浮かべる。
「ややこ(赤ん坊)が、出来たので御座います」
「そうか…」
喜んでくれれば良いものを、夫は、残念そうな顔をした。
於夕はそんな態度が不思議な上、少々腹がたった。
「嬉しくないので、御座いますか?」
「そんなはずないであろう。ただ、な…」
ただならぬ声を発した夫を、於夕はただただ見詰めていた。
その続きは、余りに夫らしい言葉だったが、於夕にとっては余り哀しい言葉だった。
「お屋形さまには、まだお子が…跡取りがおられぬ。だのに、儂に先に跡取りが出来る様な事があってはならぬ。
そのややこが、男であったなら…殺す。良いな」
「はい」