豪華絢爛/千紫万紅-乱世の花の色-
 間違っている様に聞こえるその言葉に、於夕は頷くしか出来なかった。

「この事は、他言無用ぞ」

 暫くした後。

「於夕」

「何で御座いましょう」

 女子が生まれる事を祈り続けてきた於夕の前に、夫が一通の書状を置いた。

「これを。お屋形さまから、儂に届いた書状だ」

「読んでも、宜しいので御座いますか?」

「ああ」

 恐る恐る開いてみると、その内には「生まれ来る子を殺すは、我が家臣を殺すも同じ。どうか殺さないで欲しい」と言う事が書かれていた。

「…」

 読み終えた於夕は、涙を堪えるに手一杯となり、言葉を発せずにいた。

「前言を撤回させてくれ。女であれ、男であれ、丈夫な子を産め」

 妻たる自分に、わざわざ頭を下げる辺りが、夫の生真面目さ。

「はい…っ」

 於夕は、二人に感謝の涙を流した。
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