豪華絢爛/千紫万紅-乱世の花の色-
「その様な事が……」

「ええ。貴方は、殿に望まれこの世に生を受けたので御座います。確りと、殿に尽くすのですよ」

「はい!」

 噂をすれば何とやら。厩の方から、音が聞こえてくる。

「お父様が、帰ってきた様ですね」

 そちらを於夕が見た瞬間に、左衛門はそちらへ向かって駆け出した。

「左衛門!?」

「殿の所へ、お礼を申しに行って参ります!」

 こんな時分に何を考えているのですか、と言おうとしたのを呑み込んで、代わりに別の言葉叫んだ。

「気を付けて行ってくるのですよ!夕食までには、戻りなさい!」

「はい!!」

 その左衛門と入れ違いに、於夕の夫が戻ってきた。

「どうしたのだ?」

「お前様には、秘密で御座います」

「お、おい…っ」

 父から名を貰った彼は…かの大阪の役などで「鬼」と言われる活躍をし、「独眼竜の右目」と呼ばれた父にも劣らず、立派に伊達家を支えていった。
彼の名は、二代目小十郎・片倉重長。


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