豪華絢爛/千紫万紅-乱世の花の色-
 膝がおかしな格好になっているのは、長い事、狭い場所に監禁されていた証。

「説得をしに行って、捕まるとは…何とも恥ずかしいお話で御座います」

 そう言う官兵衛に対し、秀吉も、信長も、返す言葉がない。
官兵衛が囚われている間に、取り返しのつかない事をしてしまったのだから。

「済まぬ」

 いたたまれなくなった秀吉が、官兵衛に頭を下げる。

「何を謝るのです?」

 頭の良い官兵衛は、何故、頭を下げられているのか勘づいていた。
聞かなかったのは、知らないふりをしていたかったから。

「貴様の息子を殺した。儂が、殺させた」

 信長が、いつもより静かな声で言うと、もう官兵衛は逃れられない。

「そうで、御座いますか」

 居心地の悪い沈黙を破ったのは、襖の向こうから聞こえてきた声だった。

「ご安心下さいませ」

 失礼致しますと、襖を開いたのは、半兵衛の家臣だった男。

「これ」

「はい」

 彼の呼び声に姿を表したのは、一人の少年。

「松寿丸…!」

 死んだはずの官兵衛の息子、松寿丸(のちの黒田長政)であった。

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