カラカラライフリズム



樋口がぶっきらぼうに付け足すと、

一樹は黙ったまま鈍い手つきで、

菓子をポケットから出してパッケージを破き、

もそもそと美味しくなさそうに口に運んだ。


その間に樋口はエンジンをかけ、マンションを出発した。

一樹は、窓の外の流れる風景を何ともなしに眺めていた。

実際、それしかする事が無いのだ。

お互い、喋りたい事は特に無い。

それこそ口を開けば、

小言か文句の遣り取りになる事は目に見えていたので、


沈黙というのは二人の暗黙の了解だった。
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