カラカラライフリズム
一樹は、先ほどまでとは別人のようなスピードで、
エントランスに設置された機械で、
パスワードの入力と虹彩の本人確証を数秒で済ませた。
そして執行史証明証を受付に一瞬掲示して、
エレベーターは選ばずに階段を駆け上がっていく。
彼のそんな行動はよくある事なので、
今更それを気に留める人間はいなかった。
病院の待合所とどこかの企業のオフィスの、合いの子のような、
ロビーのカウンターに構えていた受付嬢達は、
顔を見合せてまただ、と小さく笑った。
一樹は、走りながらワークパンツから、
掌ほどのサイズの黒い金属の塊を取り出した。