カラカラライフリズム
「これから寮に向かう。乗んな」

と促されて、一樹は車のトランクにボストンバックを放り込んだ。

樋口と車に乗るのは久し振り――と言ってしまえば、
毎度毎度の仕事の間隔は開いているので、
その都度『久し振り』ではあるが――だと思った。


「退院の時、一度帰りに乗せた切りだったな」

「……うん」


それからは寮に着くまでお互いに黙っていた。

これも、毎度の事。

ただし、この場合は樋口の失言だったかもしれなかった。

一樹の中で、まだ事件の記憶は新しかった。

間に一度挟んだ『仕事』以上に。

だが、環境を変える事が現段階で一番である事に変わり無かった。

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