カラカラライフリズム
樋口は、『廃人』の一樹と、対面した。
その頃の一樹は、まだあどけなさの残る少年で、――窓の外を見て微笑んでいた。
まるで、もうすぐ自分が殺されるとは、欠片も思っていないように。
本当に本当に、穏やかな表情だった。
彼は拘束されても、執行室に連れて行かれても、無抵抗だった。
泣いたり騒いだりする事はおろか、不安がる様子すら無く、
どこか浮世離れしたようにぼんやりしていた。
話しかけても、あまり反応を示さないという。
喋れないのかと思えば、そうでもないらしい。
ただし、ほんのたまに喋る言葉は支離滅裂で、会話は成立しない……。
彼は、狂いかけと、呼ばれていた。