カラカラライフリズム
樋口はその時、単に一樹が用心深い性格なのだと思っていた。
しかし、本当は違った。
一樹は悪夢を見る度に飛び起きては、発作的に銃口を自分に向けていたのだった。
引くか引かないかを迷っているうちに、汗が冷えて脳が覚醒し、夜が明ける。
後に一樹はその時の事を、「寝ぼけてただけ……」と語っていたが、
よく彼が朝から泣き腫らした顔をしていた事を、樋口は知っている。
衝動が理性を越えていたら、死んでいたのだ。
そして、一樹が珍しく「寮を出たい」と言った時……その受理に奔走したのも彼だった。
結局、その時は――記憶が戻りかけるという危機に至ったわけだが、今はもうそれも落ち着いたようだ。
その証拠に、彼は驚くべきスピードで、恋人を作った……!
樋口は、呑気にもそう信じていたのだ。
盲目的に、なりすぎていた。
かつて自分が一度、裏切られた事すら忘れ果てて……。