夢花
ガラガラ…



扉を開ける音と共にバタバタと騒がしい足音がした。



「美奈!」



女性の声だ。



私はゆっくりと目を開ける。



「ああ。美奈。なんでこんなことに…」



見るとそこには50代半ばくらいのショートカットの女性がいた。



「おかあ…さん…」



私は言う。



「美奈わかる?あなた、事故にあって病院にいるのよ。」



「事…故…?」



よく見ると、私の体はギブスのような物で固定されていた。



「…足が…動かない…。」



岩のように重い足。



「…。」



母はうつむき何も言ってはくれなかった。



もう…走れない。



どうしよう。



その夜、



私はかろうじて動く腕で引き出しの中から果物ナイフを取り出した。



「もう、私は走れない。こんな足いらない。生きていても意味がない。」



私は手に力を込め、ナイフの刃を自分の喉に強くあてがい、

そして一気に横に引いた。



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