夢花
「美奈。…あなた。」



私の目から涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。



「いやだ!死にたくない!」



叫ぶ美奈の体は私達4人の目の前でみるみる透明になっていった。



もっともっと走りたかった。



もっと生きたかった。



19歳の悲痛な叫びが私の脳裏にこだまする。



そして…



彼女は消えた。




静まり返るリビングでオーナーは言った。



「ときどきね、あるんですよ。この森に死者が紛れ込んでしまう時が。特に雨の夜はね。」



いつの間にか夜が明けていた。



雲の隙間から陽の光が見え隠れしている。



「さあ。出発してください。日が暮れる前に。」



私達は早足にそのロッジを後にした。
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