君のキオク、僕のキオク
「どうぞ」

看護師に病室に入れられたオレは、医師が佐伯に質問をしているのを見た。

後遺症の確認だろうか。


「あなたのおばあさんの名前は?」

「佐伯・・・・トキ子」

「あなたの誕生日は?」

「・・・・1月2日」

オレはそっと病室を出た。

なぜだかその場にいたくなかった。




「佐伯の記憶が戻ったって!」

次の日は、学年中がちょっとした騒ぎだった。

「もう来週から来るってよ」

「マジで?楓いないとつまんないもん。よかった」

人の中心に立つタイプじゃない佐伯は、なぜか人望に厚い。

特に女子が浮かれてて驚いた。


こんなに佐伯が人気者だったなんて。
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