君のキオク、僕のキオク
オレは歩いていた。斜め後ろには佐伯楓が歩いている。

「やっぱ、琉矢はおもしろいわ」

「あ・・・・ごめん」

「なぜ謝る!?」

オレは去年から塾に行きを始めたが、そこにいたのが佐伯だった。

佐伯は超変人で、本気を出せば相当頭いいのに本人は自覚が無いようだ。

運動神経は抜群、背が高く大柄だがとても非力。

塾の帰り。佐伯がサラサラの茶色がかかったショートヘアを指先でいじりながらゆるゆると歩いて来る。

夜の九時過ぎ。歩道は店の軒明かりと街頭に照らされている。

もう数十メートル進むと、この市一番の主要の駅だ。
主要と言っても、田舎の何も無いちっぽけな駅に過ぎないけど。

今歩いている通りは、駅の裏口側でまっすぐな道路が一本あるだけ。
まっすぐで人通りも少ないので、ものすごいスピードを出して車が走ってくる。

「あのさ、琉矢に話しがあっ・・・」

うつむいていた佐伯が顔を上げた瞬間、暗い路地から何かが飛び出して来た。
佐伯は一瞬身を翻そうとしたが、そのまま車道にすっ飛ばされた。

長身だが細身の佐伯の体は車道の真ん中で停止した。

明るいヘッドライトに照らされ、佐伯は立ち上がるが重いスポーツバックが肩から滑り落ちた。それがひかかってつまずいて前のめりになる。








< 2 / 45 >

この作品をシェア

pagetop