君のキオク、僕のキオク
大島はこっちを見つめたまま微動だにしない。

体育館裏は、薄暗く湿った風が吹いてくる。目の前には大粒の涙を流す女子。

「悪い・・・ホントごめん。大島のこと嫌いじゃないよ。けど・・・」

「もう・・・・いい」

大島はクルリと向きを変えるとちょこまかとした俊足で走り去ってしまった。今のは一体・・・・。

オレは別に佐伯と付き合ってたわけじゃない。友達だった。それだけだと思う。

確かに、夏祭りの辺りからちょっと意識するようになった。かもしれない。

夏祭りであったのは・・・・

「琉矢!何してんだよ!帰ろうぜ」

フェンスの向こうから田山が叫んでいた。

オレはゆっくりと歩き出した。
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