伸ばした手の先 指の先
帰り道
パート練習では、柚季先輩とあたしを残して皆が一斉にいなくなった。
「……」
気まずい沈黙に包まれる。
「あの手紙」
とにかく何か話そうと口を開く。
「ちゃんと読みました?」
「うん」
責めてるみたいな口調になってしまった。
「いいんですか?」
「なにが」
「小園先輩とお付き合いしてるのに、二股かけて」
1番気にしてること。
柚季先輩の1番になりたいとかじゃなく、あの場の双葉先輩とあやめ先輩の剣幕に気圧されてOKしてしまったんじゃないか。
「小園さんとは、付き合ってないから」
「別れたんですか」
「違う。告られたことが何回かあったけど、全部断った」
そうだったんだ。
ちょっと安心。
「先輩」
呼びかけると、楽器を抱えたままあたしを振り仰いだ。
「モテますね」
にこっと笑う。
「やめろよ……」
溜め息をついて、柚季先輩も笑った。