伸ばした手の先 指の先
すっかり暗くなってから、練習は終わった。
「一緒に帰りなよー」
「ほら、柚季も待ってるじゃん」
「先輩命令だよー」
葵先輩、双葉先輩、あやめ先輩に言われ、校門のあたりでちらちらとこっちを見てる柚季先輩に駆け寄る。
「帰りますか」
「はい」
2メートルくらい離れて歩き始める。
前と後ろから車がきたので、慌てて避けようと柚季先輩のほうに寄る。
「昼休み、すごい騒ぎになってたんだからね?」
「すみません。本当は、先輩の靴箱に入れておこうと思ったんです。でも、なかなか見つからなくて……。中身も入れ忘れてましたし」
「中身入れ忘れ?!バカじゃないの?!」
「こう見えてもドジなんです」
「何を誇らしげに言ってんだか」
足の長い先輩の2歩が、あたしの3歩。
女にしては歩くのが速いといわれるあたしでも、合わせるのが難しいくらい。
「あ」
「ん?どうかした?」
「綺麗ですね」
ふと見上げた夜空には、丸く赤みを帯びた満月。
「ほんとだ」
「あと二日くらいは満月みたいにまんまるなんですよね」
「そうなんだ」
明日も見たいと思う。
あなたの隣なら、満月も十六夜も三日月も、よりいっそう綺麗に見えるはずだから。
そう願いを込めて、もう一度。
東の空に浮かぶ月に。