伸ばした手の先 指の先
「ゆうちゃん」
「ひろちゃん?……あ」
「よっ、柚季」
「こんにちは、大辻先輩」
初めて見た、大辻先輩の私服。
半袖Tシャツにハーパンだった。
「……あいかわらず小学生みたいな格好しやがって……」
紘が呆れ声で呟く。
「いいじゃん別に」
「ださい」
月見も容赦ない。
「彼女の前に出るのがその格好じゃなぁ」
「紘っ……」
紘は唇の端を吊り上げて、大辻先輩を挑戦的に見やる。
「だってこれぐらいしかないんだもん」
あ、否定しなかった。
「彼女じゃないから」とか言うと思ったのに。
「なあ琴音。お前の彼氏、私服ださいな」
「普通……」
小学生スタイルでもなんでも、今この人が目の前にいればそれでいい。