伸ばした手の先 指の先
2週間。
空き地で靴紐を結ぶ先輩と帰る日々は、2週間続いていた。
定着度調査(定期テスト)3日前。
「琴音ー、帰ろーぜ」
「うん!」
部活は活動禁止なので、普段は時間が合わない紘と帰る。
「理科のレポート?いいよ。見せてあげる。ちょっと待ってて」
紘の家の前でリュックを開け、先生に返してもらったレポートを渡す。
理科の先生と仲が悪い紘はどんなに頑張ってレポートを書いても評価されず、成績がよくなかった。
「琴音って絵うまいんだな」
「それ?教科書の絵をなぞっただけだよ。完全に丸写し」
「せこいヤツ」
「処世術ってやつ?」
迷いのない1本線で描いた実験器具。
意味のない色ペンでの解説。
「あ、ゆうちゃん」
「こんにちは」
大辻先輩がスエットで現れる。
「何それ」
「琴音の理科のレポート」
「教科書丸写しです」
覗き込んだ顔に、驚愕がはしる。
言葉を失ったようだった。
その表情の裏に隠された心情を、幼いあたしはまだ知らない。