伸ばした手の先 指の先

 2週間。

 空き地で靴紐を結ぶ先輩と帰る日々は、2週間続いていた。

 

 定着度調査(定期テスト)3日前。

「琴音ー、帰ろーぜ」

「うん!」

 部活は活動禁止なので、普段は時間が合わない紘と帰る。

「理科のレポート?いいよ。見せてあげる。ちょっと待ってて」

 紘の家の前でリュックを開け、先生に返してもらったレポートを渡す。

 理科の先生と仲が悪い紘はどんなに頑張ってレポートを書いても評価されず、成績がよくなかった。

「琴音って絵うまいんだな」

「それ?教科書の絵をなぞっただけだよ。完全に丸写し」

「せこいヤツ」

「処世術ってやつ?」

 迷いのない1本線で描いた実験器具。

 意味のない色ペンでの解説。

「あ、ゆうちゃん」

「こんにちは」

 大辻先輩がスエットで現れる。

「何それ」

「琴音の理科のレポート」

「教科書丸写しです」

 覗き込んだ顔に、驚愕がはしる。

 言葉を失ったようだった。

 その表情の裏に隠された心情を、幼いあたしはまだ知らない。
< 25 / 39 >

この作品をシェア

pagetop