伸ばした手の先 指の先
家での素顔
その日は、吹奏楽部の保護者会だった。
「ただいま……」
「あんた、なんでこんなに遅いの」
大辻先輩と紘と3人で喋っていて、なんて言えない。帰ったのは5時近かった。
「紘の家で一緒に勉強してた……」
「嘘おっしゃい!」
母親は案の定キレていた。
「ずっと喋ってたんでしょう!」
「どうしてそんなこと言うわけ? あたしのこと何も知らないくせにわかったような口利いてんじゃねえよ!」
図星だったけど、このくらいのことを言っておけば説教はされない。
「保護者会なんか行く気しない。今日は家にいる」
「勝手にすれば? あたし知らない」
そのまま2階に上がる。
「琴音!降りてらっしゃい!」
「うるさい! 邪魔すんな!」