伸ばした手の先 指の先
夕食の時間は、決して楽しいものじゃない。
子供よりも食べる無職の父親。
ずっとあたしに説教してくるうるさい母親。
新体操のレッスンに出かけた妹。
もはや居候状態で、食事を別にした父方の祖母。
あたしは出された食事に手をつけず、コップ1杯の麦茶を飲んで席を立った。
こんな家なんか大嫌い。
早く出て行きたい。
よどんだ空気が肺に浸入して、息がつまる。
大辻先輩や紘と過ごす時間が楽しいから帰りたくない。
でも、この家にいる時間をなるべく短くしたいというのもまた、本音だった。