伸ばした手の先 指の先

 「頑張れば、来年こそ県大会行けるかもしれないですよ」なんて綺麗事を言うつもりは、毛頭なかった。

 だから、

「強いとこのバスパートは、練習中に遊んでませんもんね」

 イヤミに聞こえるように、わざと言った。

 目を丸くして、今の発言に驚いてる先輩に笑顔を向ける。

「楽しければいいんじゃないですか?所詮部活なんですから」

 これは、本音。

 だって、所詮は部活動。

 そこそこうまくなって、そこそこ楽しければ、それでいい。

 あたしにとっての吹奏楽は、そういうものだから。

「そうだね」

 吹っ切れたような、清々しい笑顔。

 ちょっと、ほんとにちょっとだけ、どきっとした。

 

 
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