伸ばした手の先 指の先

「お疲れ」

 駐輪場に続く公園の階段をのぼっていた。

「お疲れ様でした」

 大辻先輩の「楽譜」には、どんな音符が連ねてあるのだろう。

「どしたの」

「何がです?」

 目を伏せる。どうしてこの人は、こんなに察しがいいんだろう。

「元気ないから」

「あたし、もともとテンション低めのキャラですから」

 どうして私は、いつも強がってしまうのだろう。

「どうしてだろうねえ」

「さあ」

 休符とロングトーンしかなかったりして。



「どうしてそんなに、強がりばっかりなんだろうねえ」

 

 見抜かれてた。

 自然に、足が止まる。

「ほっといて下さい」

 声が震えないように、手をぎゅっと握りしめる。

「強がらなくちゃ、あたしはやっていけないんです」

 無理してても、「大丈夫、無理じゃないよ」と言ったり。

 我慢した涙だっていっぱいある。

 感情だけで生きていくなんてできないから。



 見抜いてても、それだけは、言わないでほしかった。

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