伸ばした手の先 指の先
顔が一気に熱を帯びる。
「そう……ですか」
物憂げな眼差しに促されるように、続きを紡ぐ。
「まだ、好きです」
俯いたままで、けれどはっきりと。
「じゃあ、付き合う?」
「いいえ」
これが、答えだった。
「お互いに好きだとわかっているなら、それ以上は望みません。規則は破れないので、付き合うことはできません」
規則なんか踏みつけて越えてやれ、と言う声がした。
でも、臆病なあたしにはそんなことなんてできなかった。
「そう、か」
哀しそうな声に顔を上げた。
伏し目がちになった大辻先輩が、寂しそうな微笑を口元に浮かべた。
「それじゃあ、またね」
「さようなら」
ふと見上げた空の北には、真珠のような満月が輝いていた。