伸ばした手の先 指の先
噂
正式に柚季先輩と付き合うことが決まり浮かれていたある日。
部活動の保護者会に行っていた母が帰ってくるなり、あたしは冷たいフローリングに正座させられた。
「どういうこと?」
冴え冴えとした、冬の木枯らしみたいな声。
「2年の先輩と付き合ってるそうじゃないの」
無機質なようでいて、激しい怒りを含んだ声。
「何とか言ったらどうなの?! ええ?!」
耳障りな、甲高い金切り声。
「だったら、なんだっていうの?」
父譲りの、女子にしては低めのアルトで応戦する。
「あんたには関係ないでしょ?」
ナイフのように研ぎ澄ました眼差しを、母に向けた。
茶色の虹彩の奥の紺の瞳孔まで、視線だけで貫き通してやる。