伸ばした手の先 指の先
失って気づくこと
今日で、夏休みの部活は終わりだ。
「ねえ、昨日お祭り行った?」
いきなり友達に話しかけられ、戸惑う。
「え?行ってないけど。なんかあったの?」
「大ニュースだよ大ニュース!!柚季先輩と彼女がいたんだよっ!!」
手をぱたぱたさせて興奮しているその子の声がやけに遠くで聞こえると思ったら、無意識のうちに耳をふさいでいた。
「琴音?」
「ううん、なんでもないよ」
大辻先輩ニ、彼女ガイタナンテ。
知ラナカッタ。
ああ、と気づく。
あたし、大辻先輩のこと、好きなんだ。
その日の練習は、全く集中できなかった。
パート練習はみんな遊んでたけど、あたしだけ次の演奏曲の楽譜づくりをしてた。
そうすればいつかみたいに、また声をかけてくれるんじゃないかって。そんな期待、してる自分がいた。