伸ばした手の先 指の先
日曜日。
中学生になってから初めて来た、駅前の文房具屋さん。
ふと目に留まった、薄緑の和紙のレターセット。
ペンも一緒に買って、家に帰る。
机に向かって、深呼吸。
大辻 柚季先輩へ
単刀直入に申し上げます。私は先輩が好きです。
でも、先輩には恋人がいると噂に聞いたので、諦めようと思っています。
私が先輩を好きだということを知っていただければ幸いです。
渡辺 琴音
月曜日。
「こんにちは!」
昼休みに双葉先輩に会ったので挨拶と報告。
「あの……柚季先輩に手紙書いてきました」
「マジで?!渡してきてあげよっか?!」
「いいんですか?!お願いします!」
親切な申し出をありがたく思いながら、封筒を手にする。
……ん?
軽い。軽すぎる。
ひやりと嫌な予感がする。
慌てて教室の電気に透かすと、便箋が入っていなかった。