悪魔と時間
「で、決まったか?」


悪魔だと名乗った男は考え込む私を睨む。


「ごめん。ごめん。で、本当の名前は?」


考えるのもおっくうなので、軽く謝ってから名前を聞き出そうとした。


「馬鹿か?お前・・・・人間如きに俺様が名前を明かす訳ないだろ」


悪魔にとって名前を知られるということは、命を握られるのと同じことだと、私はこのとき知る由もなかった。


「まあ、どうでもいいけど、早く帰って」


私はドアを示すと帰りを促した。


この際、不法侵入は見逃してあげよう。


寛大にそう思っている私に、彼は再び眉をひそめる。
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