悪魔と時間
「これなんかいかがですか?」


そう言って一冊の本が差し出される。


綺麗な革張りの表紙。


そこには、かろうじて読めるほどの薄くなった字で『時間の有効な使い方』と、記されている。


そんなに時間を持て余しているように見えたのか?


軽くショックを受けながらも、不思議と妙にその本に惹かれる。


「その本はずっとあなたを待ってたんですよ」


店員は、本に魅せられている私にそういう。


そう言われたせいなのか。


本当にその本は自分を待っていたように思える。


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