ヒワズウタ ~ユヅキ~
「弁当、温めますか?」
無機質な男性店員の声に我に返った。
視線は下げたまま、小さく頷く。
商品の入った袋を受け取り、店の外へと出る。
店の外は、夏の夜の空気で満ちていた。
軒下の誘蛾灯の青白い光に、虫が群れている。
バチッ と、
命の終わる音 が した。
同時に、背中に衝撃が走る。
擦れるように聞こえた
「すみません」
の、声。
首だけ振り返ると、先程の少女が、
オレの背中に、ペッタリ、貼り付いている。
なんだ、刺された訳じゃないのか。良かった。
体を少女の方に向け、少女の肩に手を置いて少し屈む。
まるで、子供に目線を合わせてるみたいだと思うと、少し笑える。