ヒワズウタ ~ユヅキ~
時間は過ぎ、気持ち良く酔い店を出る。
駅に向かう途中で同僚に聞かれた。
「夕月さん、本当に彼女とかいないんですか?」
また、その会話か。
世の中、恋愛以外にもっと大切な事あるだろう。
こいつも、まだガキなのか?
「いません、ほんと。いい年なのに困ってるんですよ。」
愛想笑いで躱し、駅に向かって歩く。
少し後ろで歩いている同僚の気配を背中に感じながら。
「・・・好きです・・・」
背後からの声は、街の雑踏に混じり掻き消された。