ヒワズウタ ~ユヅキ~
「申し遅れました、夕月と申します」
俯いてしまったままの彼女の顔を覗き込むように、お辞儀をする。
「あの、今日は、遅かったんですね。」
「あぁ、・・・少し残業になってね。」
嘘だ。
仕事なんてさっさと終わって、同僚と楽しく晩飯に行ってたじゃないか。
俯いたままの彼女に話しかける。
「チヒロちゃんは仕事は、もう終わったの?」
「あの・・・お礼を言いたくて・・・」
「・・・お礼?」
彼女は顔を上げて、
一気にまくしたてるようにして言った。
「昨日は、本当に、ありがとうございました。
それに、たくさん話も聞いてもらってしまって。
あんなに一度にたくさん話してしまって、すみませんっ!」
胸骨の下の方が、
ギュッ と、
痛んだ。