ヒワズウタ ~ユヅキ~



胸骨の下の方が、



ギュッ と、



痛んだ。



もう、やめよう。

昔のことを思う出しても、どうにもならない。


それでも、

一度開いた記憶の蓋の隙間から、止め処なく溢れ出す。


地元で家を継いだ双子の兄の事。

幼馴染みだった絹代の事。

絹代を好きだった同級生の秋山の事。


包丁が止まる。

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