ヒワズウタ ~ユヅキ~
大学生の頃に付き合っていたトモが吸っていたんだ。
いつもは吸わないくせに、
肌を重ねた後、
トモは、
いつも何かから逃げるみたいに煙草に火をつけた。
薄い闇に晒された皮膚に、
青白い煙が纏わりつく様子が酷く綺麗だった。
煙草を吸う時のトモの横顔は、
何かを深く考えているかのようで近寄り難かった。
だから、
同じ煙を纏えば少しでも近づけそうな気がしたんだ。
それなのに、
トモを理解することなんて一度も無いまま、卒業と同時に別れたきりだ。
また、
胸骨の下の方が、
ギュッ と、
痛んだ。
テレビもつけずに、
ただボンヤリと、
夜が始まろうとする空を眺めれば、
鳥の群れが東の空へと飛んでいった。