ヒワズウタ ~ユヅキ~
バサッ
とか音がして、オレの鞄とか少女の荷物が地面に落ちる。
「・・・大丈夫?
ここのバイトの子だよね?」
少女に問い掛けるも、返事は無い。
儚げな少女の顔が、すぐ近くにある。
色を失ったその唇は、
とても柔らかそうで、
首を傾ければ、
オレの唇に、すぐ触れそうだった。
オレの思考能力も、ほぼゼロに等しい。
まったくもって無意識に少女を抱き上げて、コンビニの店内へと入る。
買い物を終え店内から出ようとする他の客が、驚いたようにこちらを見る。
レジにいる店員に声をかけて、中で休ませてもらえるように伝えると、店長らしき人がこちらに走り寄ってきた。
「チヒロちゃん! 大丈夫っ?!」
「ここのバイトの子ですよね?
少し休ませてあげて下さい。」
店長らしき人に声をかけ、腕の中の少女を見ると、意識はあるようだ。
「立てるかな?」
声は無く、ただ小さく頷く少女の儚げな表情。
ゆっくりと足を下ろしてあげる時、
近づいた少女のうなじからは
甘い匂いがした。