危険中毒
「ねえ、ムーン。」
前方から、
視線を逸らさぬまま、
名を呼ぶ。
「何だ?」
彼も同じく、私には
視線も合わせない。
「この仕事、
私にくれない?」
「何?」
少し、唐突だったか?
情報と現実の誤差が、
自分の中で、激しく
警鐘を鳴らしている。
動かぬ気配。
この状況をもって
未だ攻撃すら、
しかけぬ状況。
監視されている。
長期戦のプロに。
この戦法は、ゲリラの
可能性が高い。
7〜8人ほどの気配では
あるが・・・
何にしろ、彼と
共倒れになるわけには
いかない。
多くは聞き出せてはいないが、
マックスが、この作戦・・・
H&T潜入に関して、
重要な位置付けにあることは
確かだ。
こんなところで、
危険に曝す必要はない。
「ダメだ。サタンを嘗めるな。
この気配、
わかっているだろう?」
案の定、却下だ。
「腕試しにもって来いだ。」
「リディア。
それは、許さない。
ここにいても仕方ない。
進むぞ。」
不機嫌、極まりない
ムーンの声に、
彼を帰す事を諦めた。