危険中毒
 
「監視カメラ・・・?」


そこに、あったものは
まさしく一台の
監視カメラ。

本来なら、
無機質であるはずのソレに、
あるはずのない
気配を感じた。


それほど、
生活音がないと
いうことか?


追い込まれるような錯覚に
苛立ちはピークに来ており
問答無用に撃ち壊した。


「何やってるんだ!
無駄な弾を使うな!」

ムーンの罵声が飛ぶ。


粉々になったはずのレンズ。

視力を失った瞳と
同じはずなのそれが、
今だ意志を持ち、
自分を監視している気がする。


視線を反らせずに
いたが・・・


「いくぞ!リディア!」

珍しく、荒げた声の
ムーンに向き直る。

口は悪いが、
いつもポーカーフェイスで、
感情的になったりしない
オトコなのに・・・


相当、この空気に
アテられていると
言うことだろう。


怒りが沸点に到達せぬうちに、
追い付く事が得策だ。


前を向き、バイクを進める。


背後で、


壊れたはずの監視カメラが
ガクガクと音をたてる。



 

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