危険中毒
再び、扉が近づく。
もう、その奥では、
尋常ではない事が起きてると、
察知できる。
「リディア。」
突然、ムーンがそういって、
背後から肩を抱き寄せる。
その手元には、ピストルが
握られていた。
耳元で、彼は囁く。
「ここは、
通称『地獄の入口』と
呼ばれてる。
ついでに言えば、
出口はないから。
逃げようと思うなよ。」
ひどく低く
威圧感のある声で。
そして、耳に口づけて、
尚も、声が漏れない様に
つづけた。
『サタンとは寝るな。』
『今、通って来た通路は
覚えてるな。』
こんな状況でありながら、
不覚にも、
恐怖と別の意味で
心拍数が上がる。
私は、無言でうなづいた。