危険中毒
「いくぜ。」

ムーンにつきつけられた
銃口に力が加わる。

前進の指示の
つもりなのか・・・。

その扉を、無表情な男が
引き開けた。

その瞳は虚で、
鍛えあげた筋肉だけが、
やたらと存在を
主張していた。

脱走なんて、
できないのだろう。


無意味なほど、広い室内は、
やはり、絨毯が、
敷き詰められており、
壁面には、等間隔に並んだ
間接照明が、ほのかに室内を
照らしていた。


祭壇のような台座に、
男がかけている。


ムーンに
負けず劣らずの美形。


こいつが・・・サタン・・・?


分厚い書籍に
視線を落としていた、その男は
すっと顔をあげた。

「ほー。
プリンスじゃないか。」

からかうように、
男はいった。

「その愛称は止めろ。
サタン。」

ムーンは、
表情を変えることなくいう。

「かねてから注文の、
オマエの情婦を見つけたが、
どうする?」

「ほう。美しいな。
レディ、名前は?」

男は、私に
視線を向けていった。


「シェラザード。」


私が口を開くより早く、
口元に嘲笑を浮かべ、
ムーンが言い、
その途端、サタンは、
その表情を曇らせた。


 
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