危険中毒
ムーンが、真剣な眼差しで、
頭上から私の肩先を狙って
ナイフを振り下ろすのが、
スローモーションの様に
見えた。


私は、彼を交わす。

私の眼は、
つまらなそうに
宙を仰ぐ標的を
捕らえていた。

頭で考えるより早く、
私は手にしたナイフを、
持ち主に向かって、
思いっきり投げていた。



ーーーータンッ・・・



乾いた音がして。


ちっ・・舌打ちが
耳元で聞こえた。


「大バカヤロウが・・・」


私は、
再びムーンに動きを拘束され、
ナイフを動脈に
突き付けられた。


「ボス、怪我は?」

ムーンが、
その男に問う。


「私が怪我?

有り得ないだろ?

どこぞの神が、
守ってくれたらしい。」

彼は、
狂った笑みを口元にうかべ、
分厚い本から
貫通していたナイフを抜き、
その書物を無造作に捨てた。

それは、

いずれかの宗教の
教典の様だった様だ。


サタンは
真っすぐこちらへ
歩みを進める。


私は、じっと、
その男をみやる。

「合格だ。リディア。

だが、躾は必要だよ。
プリンス。

印が要るな。
お前に寝とられちゃ
かなわないから。」


光る刃先が、近づいた。





 
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