危険中毒
時間は、まだある。
目的の巨塔近くで、
車を停め降り立つ。
陸へ向かう車なんてなくて、
目の前に聳える
居住ステーションが、
いかに充実しているかが
わかる。
この道の先にある、
私たちが暮らす地に、
求める用なんてないのだ。
どうして
彼は
横で眠る、この男は
その地を捨てるような
選択をしたのだろう。
除隊になる以前についても、
以降にしても、
私は、あまりにも、
彼の素性をしらなかった。
「起きてんでしょ?」
相変わらず動かない男の
サングラスをとって
声をかける。
「ああ。
そろそろいかねーと
遅れるぞ。」
目を開けて彼はいう。
「了解。」
私は、再び、アクセルを
全開に踏み込んだ。