危険中毒
「ムーンは、どこだ?」

私の顔をみるなり
奴はいう。


「知らないね。
持ち場にいるはずだが。」

「減らず口をたたくな。」

容赦なく
平手が飛んでくる。

食指をなくした利き手では
当然、喰らったりはしない。


「リディア。つきあえ。
マリアを迎えに行く。」


周りが一瞬反応した。


サタンの命令じゃ
拒否などできない。
後に続くほか、なかった。


『気をつけろ。
予定外の客だ。』


耳骨にムーンの声が響く。

返事を返す訳にもいかず、
ただ、奴に黙って
付いていく。


しかし


それが、
あのフロアから
私を連れ出す口実だったと
すぐに、知る事となった。


「こちらだ。」

指された方に、
気をやった瞬間
そばにあった
エレベータに連れ込まれ
壁にたたきつけられた。


「どこへいく?
迎えっていってたよな。」

何度も同じ手を喰らうか。
 

瞬時に体を入れ替え
サタンを手摺りに押し付け、
背中に捻った腕を固定する。


 

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