危険中毒
ヒールの踵でおもいっきり、
色あせた造形を蹴破り、
容赦なく電線をひっぱりだす。

まさか、こんなところで
旧大国の遺物にであう
とはね。

キムに、かつて教わったように
結線し、遠慮なしに、
エンジンを全快にした。

 
燃料がほとんどない。

でも意識のなかった私を
運んだ時間を考えれば
さほど距離もないはず。

つけっぱなしになっていた
ナビゲーションシステムに
視線をやれば


「バカなオトコ」

可笑しくて
歪んだ笑みが浮かぶ


残ってんじゃん。


外部通路への道

それも
さっきの履歴が残ってる。

ポケットからだした方位磁石で、
進路を定めて
太陽の位置を確認し
眉間にシワを寄せた。


ダメじゃないか。

この太陽は、嘘をつく。


こんな
巨塔の中

太陽なんて
見えるはずないんだ。

磁場は
いくらでも操作できる。
ここの磁力は、
ないに等しい。


このナビシステムを
信用するしか

二人のいるだろう場所に
行き着く方法は無かった。


 

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