危険中毒
侵入者がいる
不意に、感じた他者の気配に、
慌てて後ろを見遣る。
「・・・おまえか。」
何とか、
平素の自分を
取り繕う。
「こちらに、
いらっしゃいましたか。
ご無沙汰しております。
サタン。
お迎えに上がりました。」
私に笑みを向けるソレは
表向きは、あの男の
第一秘書だ。
顔半分を覆う
ブロンズの髪
その下の、
宝石の装飾を施した
眼帯は、特別仕様だ。
実際、この女は、
その奥に納められた
奴の資産を守っている。
私と、さほど
歳も違わぬこいつは、
私が、この企業に
迎えられた頃より
アノ男に飼われていた。
リディア=デルタ=ホワイトに
勝る、その美貌
鍛えぬかれた戦闘能力
私など及ばぬ
強靭な精神力
単なる金庫番に
過ぎなかったこの女は、
みるみる内に才覚を発揮し、
その肉体とテクニックで
あのオトコを骨抜きにし
今や、掌で転がしている。
コイツの存在を知るものは、
あのオトコ以外には
私しかいない。
ミカエルも・・・
ムーンも
気付かぬだろう。