危険中毒
「こちらをお召しください。
その出で立ちでは、
主は、お会いにならない
でしょうから。」

そういって彼女は
手にしていた
ジェラルミンケースから
黒いシャツを取り
差し出した。

「会場はどうなってる?」

「社長のお越しを
側近達が気を揉んで
待ってますが・・・」

何故、そんな事を気にする?

そういいたげな表情だ。

 
そろそろ戻らねばならない。

ムーンが、ここまで私を
追ってきたのは、
半分は来場者への面目の為に
呼び戻す事が
必要だったからだろう。


それにしても

一人で戻る事はマズイ。


「おい。おまえ
私と会場へ来い。」

彼女は、無表情なまま
私をみやる。

「『マリア』の代理だ。」

そう、告げて、
私邸を後にする。


二度とここへは来ない。





こんな、乱された場所になど。




いや、来れない・・・の
誤りか?



このオンナを連れ出して
あのオトコが黙っているとは
思えないから。




 


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