危険中毒
足が退いた一瞬を読み、
壁にもたれていた身体を
床に伏せて、
腕の筋力を利用した
膝狙いの蹴りを見舞う。

これは、キマル

そう確信した攻撃は、
後方への宙返りで
かわされた。

あの間合いでか?!


普通の人間か?


訓練された者だとしても
あまりに俊敏すぎや
しないか?


ヒットの直前
だなんて。


脳に振動を
過度に喰らったせいで、
いつもほどに、動けない。


相当な訓練を
積んでるであろう
このオンナが、
それを見逃すはずは
なかった。


一瞬、眩暈を感じ
膝を崩した瞬間


側頭部に強烈な
痛みと振動を受けて、
再び地に伏せた。


明度を失せて行く視界


遠退く意識の中
オンナの声がする。


「甘いのよ。『マリア』
この死人が・・・」


もう、指先すら


動かせなかった。





ジニーの無事だけを
朦朧とした意識の中
願っていた。



 


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