危険中毒
既に、水蒸気で
しっとりしてしまった
図面をくわえながら
男は苦笑する。

濡れて、額に
張り付いていた髪を、
ぐっと袖で拭って、
奴は言い放った。


「ダンナは・・・
かわんねぇな。」


なにかを
考える余裕なんて
ちっともなくて


伸ばされた手を
離れない様つかんで、

扉を押しながら


中へ

転がりこんだ。



 
俺達を迎えたのは
クソ程せまい通路。

筋肉ダルマなら通過も
不可能なそこは、俺達だから、
ひっかかりながらも
進めたんだろう。


コの字を組み合わせたような
迷路状の通路が、
ただ、ひたすらに続いてく。


なんとか


迷路を脱出すれば






そこは



血みどろになった



エレベータホールで。







「振り出しに戻った訳だ。」






見覚えのある景色に
苦笑を禁じえなかった。









 

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