危険中毒
結構、流血したらしく
目眩が続くのも納得できた。


「あの男の私邸の位置は
わかるのか?」

多分、この傍のはず。

さっきの非常階段を、
使えるような立地に
あるはずだ。

「レーダで、位置を
探る程度にはな。」

その言葉を受けて
小さな痕跡を得ようと
とってつけたような
アスファルトに目をこらす。

染みる血痕は簡単には
とれないから。

いや、異質なのは、
アスファルトより
このエレベータホールか?


つまらない思考に
眉間にシワを寄せた。

どちらにしろ、
こんなパンドラの世界には
興味はない。


構造にも
存続にも。


やるべき事は、
モニカの救出で。


ああ、キムも
乗り込んでいたな。

早く、奴らと
合流しなければならない。


全てを
無駄にしないために。


なかった事にするとか

流されてしまうとか


そんな適当な事は
許されない程に
出来ないほどに

流れた血も
軽んじられた命も
桁外れに多かった。



 


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